債権回収の弁護士コラム

少額訴訟を提起する―簡単!分かりやすい解説シリーズ④ー

債権・お金を回収する手段に、少額訴訟という方法があります。

今回は、少額訴訟について、手続きの要件や流れ、判決の特徴などを簡単かつ分かりやすくまとめてみます。

◇◆少額訴訟とは

少額訴訟とは、請求額が60万円以下の少額な金銭の支払請求訴訟について、通常の民事訴訟より手続き等を簡略迅速化した訴訟をいいます。

◇◆少額訴訟の要件

少額訴訟は、金銭の支払いを求める訴訟で、金額が60万円以下であることが要件となります。

このような要件とは別に回数制限があり、同一原告は、同じ簡易裁判所において年に10回までしか少額訴訟を利用できません。

このような要件を満たしていても、被告が最初の口頭弁論までに通常訴訟への移行を望んだ場合は、少額訴訟を利用できません。

また、事件の内容等に照らし、簡易迅速に事件の審理を得られないなど、裁判所が少額訴訟による解決が相当でないと判断するとこも、同手続きを利用できず、通常訴訟に職権で移行されます。

◇◆少額訴訟の手続き

少額訴訟は、管轄のある簡易裁判所に訴訟提起します。

●簡易化

少額訴訟では、提出する証拠は即時に取り調べるものでなければなりません。 証人を呼んで証人尋問することもできますが、宣誓を省略でき、尋問の順番も裁判官が相当と認める順序で行います。さらに、電話会議の方法で証人を尋問することもできます。被告は反訴することができません。

●迅速化

少額訴訟は、初回の口頭弁論で審理が終了、その後直ちに判決が言い渡されるのが通常です。 つまり、通常であれば、たった1度の裁判で、手続きが終了することになります。

そのため、初回の口頭弁論・裁判の日までに(遅くともその裁判期日中に)、すべての主張・反論・証拠の提出をしなければならず、事前準備がとても大切になります。

◇◆少額訴訟の判決

少額訴訟で、原告の請求を認めて、被告に対して、金銭の支払いを命じる内容の判決を出す場合、裁判所は、判決言い渡しから3年を超えない範囲で、一括支払いの期限を猶予したり、分割払いをするよう命じることができます。

また、このようは判決を命じることができることと併せて、期限に従って一括払いした場合や、期限の利益を喪失することなく分割払いを終えたときは、訴え提起後の遅延損害金の支払い義務を免除すると、判決で定めることもできます。

他方、このような判決に対して、不服を申し立てることはできません。

判決に従った支払いがない場合は、判決に基づいて強制執行が可能です。

◇◆少額訴訟のメリット・デメリット

金銭の支払いに関するトラブルで、請求金額が少額な事件では、裁判費用や裁判に要する労力や時間、弁護士や司法書士を選任した場合にはそれにかかる費用も考えると、裁判は割に合わないと感じる方も多いと思います。

このような実情を踏まえ、請求金額が少額で、複雑困難な事件でないものについて、簡易な手続きで迅速に処理できるよう、平成10年、少額訴訟手続が創設されました。

これまで述べたとおり、少額訴訟のメリット・有用性は、その手続きが簡易であることと、解決までのスピードが早いことが挙げられます。 さらに、本来、調停や和解など当事者の合意がなければ定められない、支払の猶予や分割払いを判決で命じることができるとされていることで、被告の資力、支払能力に応じた柔軟な解決が図れることも挙げられます。

これに対して、デメリットは、少額訴訟を行うつもりで訴訟提起していも、上記のとおり、通常訴訟に移行されてしまうことがある点や、判決で支払の猶予や分割払いが命じられた場合に不服があっても、不服申し立てできない点が挙げられます。

◇◆少額訴訟の利用例

以上のメリット・デメリットを踏まえると、以下のような場合に少額訴訟を活用するのがよいと思われます。

  • 金銭の支払いを求めたい
  • 請求金額が60万円以下である
  • 債権の成立自体に争いがない(被告が支払義務を認めている)
  • 債権の立証が容易である(契約書などがある)
  • 年を超えない範囲での支払い期限の猶予や分割払いになってもかまわない

これらの具体的な例として、 ※いずれも金額60万円以下の場合

  • 貸したお金の回収(金銭消費貸借契約書など金銭の貸し借りが明らかな場合)
  • 売買代金、請負代金など各種代金(売買契約書、請負契約書など各種契約書がある場合)
  • 滞納家賃や敷金返還請求権(賃貸借契約書がある場合)
  • 交通事故(物損)の損害賠償請求(修理代金等の損害について請求書や見積書があり、その金額に争いがない場合)

などが挙げられます。

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