債権回収に要する費用は、どこまでの手続きを行うかによって変わります。
当事務所が依頼を受けた場合、通常は、まず相手方に内容証明を送付する等の手段で支払の催告を行った上で、交渉による解決を図ります。交渉で解決できた場合、裁判の着手金や強制執行の申立手数料はかかりません。
ただし、相手方との和解時に公正証書を作成する場合や、相手方から金員を分割で回収する場合は、別途手数料がかかります。
相手が交渉に応じない場合は、訴訟を提起し、判決(債務名義)を取得します。なお、裁判の中で和解協議を行い、和解が成立することもあります。
裁判上の和解が成立し、又は判決が出た後、任意の支払いがあればいいのですが、それでも支払いがない場合は強制執行を行い、相手の財産を差し押さえ、債権の回収を行います。
以下では、それぞれの段階にかかる費用を説明します。なお、着手金はそれぞれの段階でかかりますが、報酬金は段階を問わず最終的な回収金額により生じます。
例えば、強制執行まで行った場合、着手金は交渉・訴訟・強制執行の各段階で必要となりますが、報酬金は強制執行により回収した金額に対してかかります。
1.交渉
交渉においては、弁護士が依頼者の代理人として金額や支払い方法等の交渉を行います。
交渉にかかる弁護士費用は、原則として着手金10万円(税別)と、現実に回収できた金額の16%(税別)の報酬金です。なお、仮に全く回収できなかった場合、報酬金は生じません。
その他、郵便代等の実費がかかります。また、相手方の住民票を取得する場合には住民票の取得代行手数料がかかります。
2.訴訟
交渉がまとまらなかった場合、訴訟を提起します。なお、交渉の見込みが全くないような場合、交渉を経ずに最初から訴訟を提起することもあります。
訴訟にかかる弁護士費用は、内容に応じて着手金10万円~(税別)と、現実に回収できた金額の16%(税別)の報酬金です。回収できなかった場合に報酬金が生じないのは交渉と同様です。
なお、相手方から反論等が提出され、訴訟が長引く場合は、期日日当が発生することがあります。
その他、訴状に貼る印紙代、郵便代、弁護士の交通費等の実費等がかかります。
3.強制執行
強制執行は、相手の財産を差し押さえ、債権を回収する手続きです。判決が出ても相手が支払いをしない場合、強制執行を行います。
強制執行にかかる弁護士費用は、1申立てにつき5万円(税別)と、現実に回収できた金額の16%(税別)の報酬金です。回収できなかった場合に報酬金が生じないのは同様です。
強制執行は、相手の財産を特定し、申立てを行う必要があります。相手の財産が分からない等という理由により特定できない場合、相手の財産の調査が必要になります。この調査にも手続きに応じて手数料や実費がかかります。
なお、相手が有する銀行口座3件、自動車1件を差し押さえる場合であっても、銀行口座3件の差押えはまとめて申し立てますので、申立ては2件となります(同じ種類の差押えであれば1件で複数同時に申し立てることができます)。
その他の費用として、申立書に貼る印紙代、郵便代等の実費があります。
なお、強制執行には、①債権執行、②不動産執行、③動産執行等の種類があります。このうち、②の不動産執行を申し立てる場合、裁判所が定める予納金(名古屋地方裁判所の場合は原則70万円)を納める必要があります。この予納金は、不動産が落札された場合には返還されます。また、動産執行の場合も、裁判所に数万円前後の予納金を納める必要があります。
動産執行を申し立てて弁護士が現地に出張する場合には、その分の日当が発生します。