仮差押えの担保金(供託金・保証金)は、仮差押えにより、債務者に不当な損害を与えた場合に備えた担保です。
したがって、仮差押えの後に本案訴訟を提起し、勝訴判決を得る等の方法により、担保を取り戻すことができます。
仮差押えの担保金(供託金・保証金)を取り戻す手続きには、主に3つの方法があります。
1.勝訴判決が確定する等、担保を提供する事由が消滅した場合(民事保全法4条2項,民訴法79条1項)
仮差押えの債権者(申立人)が本案訴訟を提起し、勝訴判決が確定すると、仮差押え命令は正当なものであり、債務者(相手方)が仮差押えによって不当な損害を被ったと請求を受ける可能性が消滅します。裁判上で債務者(相手方)が請求を認諾したり、勝訴判決と同様の裁判上の和解や調停が成立したときも同様です。
このような場合には、担保金を提供する必要がなくなることから、債権者(申立人)は担保金を取り戻すことができます。
2.担保権利者(仮差押えの債務者)が同意した場合(民事保全法4条2項,民訴法79条2項)
仮差押えの担保金提供の趣旨は、前述のとおり、仮差押えの債務者(担保権利者)の不当な損害に対する担保です。
その者が担保に対する権利を放棄した場合、債権者(申立人)は担保金を取り戻すことができます。
3.権利行使の催告により同意が擬制される場合(民事保全法4条2項,民訴法79条3項)
本案の訴訟が完結した場合、債権者の申立てにより裁判所は仮差押えの債務者(担保権利者)に一定期間内に損害賠償請求権を行使すべき旨を催告します。その期間内に権利行使しなかったときは、担保取消に同意したものとみなされ、債権者(申立人)は担保金を取り戻すことができます。
参考条文
民事保全法
(担保の提供)
第四条 この法律の規定により担保を立てるには、担保を立てるべきことを命じた裁判所又は保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に金銭又は担保を立てるべきことを命じた裁判所が相当と認める有価証券(社債、株式等の振替に関する法律(平成十三年法律第七十五号)第二百七十八条第一項に規定する振替債を含む。)を供託する方法その他最高裁判所規則で定める方法によらなければならない。ただし、当事者が特別の契約をしたときは、その契約による。
2 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第七十七条、第七十九条及び第八十条の規定は、前項の担保について準用する。