分割払いに応じる場合、将来支払いがなされないリスクがあります。
そこで、合意内容を適切な書面で作成したり、必要に応じて連帯保証人等の担保を取得するなどを行い、リスクをできるだけ軽減することが重要です。
1.分割払いに応じるメリット
一括での支払いが難しい場合は、相手の経済状況に応じた相当な範囲で分割払いに応じる方が、結果的に債権の回収につながることはよくあります。
したがって、本来は一括払いが望ましいとはいえ、分割での支払い自体は、十分検討に値する方法といえるでしょう。
2.分割払いに応じる場合の注意点
しかし、分割払いに応じることは、以下のような注意点があります。
①相手の支払能力低下のリスク
転職や勤務時間の変更、家族構成の変化等により、相手の支払能力が低下することがあります。そのため、分割払いに応じる場合は、相手の財産状況や支払いの見通し等を十分確認することが必要です。
また、支払期間についても、あまりに長期にわたると、支払能力の問題に加え、支払意思の低下によるリスクも考えられます。そこで、一般的には、支払期間は3年以内で設定することが望ましいと言えるでしょう。
②分割払いの合意内容は、必ず書面化する
分割払いに応じる場合、総額いくらをどのような条件で支払っていくのかについて、書面で合意しておくことが必要です。
書面にしておかないと、金額や支払内容等について、言った言わないの話になってしまい、裁判を起こす際も立証が困難となってしまいます。
③書面には、期限の利益喪失条項、遅延損害金条項を入れておく
期限の利益とは、簡単にいうと、「返済期日までは支払わなくてもよい」という債務者側の利益のことをいいます。
例えば、総額50万円を毎月2万円の分割で支払うと合意した場合、最後の2万円は25か月後の支払いとなるため、それまでは債権者はその支払いを求めることができなくなります。
このときに、初回、2回目と支払いがなかった場合、何も定めなければ、各2万円はそれぞれの支払期日まで支払いを求めることができません。
そこで、債務者がきちんと支払いをしない場合は、この期限の利益を喪失し、一括請求となる旨を書面で定めておきます。これを「期限の利益喪失条項」といいます。通常は、2回(又は2回分)支払いが遅れた場合、一括請求となる旨定めることが多いです。
また、支払いが遅れた場合のペナルティーとして、支払いが遅れた場合は遅延損害金が加算される旨を定めることも有効です。
④必要に応じて人的・物的担保を要求する
将来は不確実であり、債務者が突然病気やケガにより働けなくなったり、勤務先が倒産する等のやむを得ない事情が生じる可能性もあります。
そこで必要に応じて、人的担保(連帯保証人)や物的担保(自宅に抵当権を設定する等)を要求することも大切です。
⑤債務名義を取得する
前述のとおり、分割払いにはさまざまなリスクが伴います。
そこで、いざとなればすぐに債務者の給料債権や預貯金、不動産を差し押さえることができるように、分割払いの合意内容を公正証書(強制執行認諾文言付)等の債務名義で作成しておくことも重要です。