債権回収のために訴訟を提起する場合、管轄のある裁判所へ、訴えを提起する必要があります。
全国各地にある裁判所の内、どの裁判所に管轄があるかは、事件によって異なります。
1つの事件について、管轄を有している裁判所が1つしかない、というわけでもありません。
管轄を有している裁判所が複数ある事件も多く、その場合、原則として、原告が、どの裁判所に訴えるか選択することができます。
契約に基づいて発生した債権を回収するための請求訴訟については、次のような土地・場所を管轄している裁判所に、訴訟提起することができます。
- 被告の住所地を管轄する裁判所(民事訴訟法4条)
- 義務を履行すべき場所(同法5条1号)
- 契約の際に、当事者が合意した第1審裁判所(同法11条)
例えば、愛知県岡崎市にあるZ建築会社が、岐阜県羽島市にあるM社に、三重県桑名市が現場の下請け工事を依頼したとします。 請負契約では、本契約に関する紛争については、第1審裁判所を名古屋地方裁判所とすることができる旨の契約条項が定められていました。
この場合、下請け工事を請け負ったM社は、Z建築会社に請負代金・工事代金の請求訴訟を提起したい場合、
●被告の住所地:Z社(愛知県岡崎市) ⇒ 名古屋地方裁判所岡崎支部
●義務を履行すべき場所:M社(岐阜県羽島市) ⇒ 岐阜地方裁判所
●合意による管轄 ⇒ 名古屋地方裁判所(本庁)
以上3つからいずれか1つの裁判所を選んで、訴訟提起することができます。
なお、請求金額が140万円以下の場合、簡易裁判所に訴訟提起することになります。
ただし、合意による管轄がある場合について、合意の内容・合意の方法によっては、合意した裁判所のみを管轄裁判所として、他の管轄裁判所を排除している場合があるため(専属的合意管轄と呼ばれています)、注意が必要です。