先取特権は、先取特権の対象となる財産の違いから、一般先取特権と特別先取特権に区別されます。
一般先取特権を有する債権者は、債務者の総財産・一般財産から、他の債権者より優先して債務の弁済を受けることができます。
特別先取特権を有する債権者は、債務者の有する特定の財産からのみ、他の債権者より優先して債務の弁済を受けることができます。
特別先取特権の内、債務者の有する動産から優先弁済を受けられる権利を動産先取特権、債務者の有する不動産から優先弁済を受けられる権利を不動産先取特権と呼びます。
先取特権に関しては、基本法として民法306条から341条に定めがあります。
売掛金・各種代金の回収を図る上で知っておきたい権利として、動産売買先取特権があります(民法311条5号、321条)。
これは、ある商品(動産)を売った場合の売買代金と利息について、その商品から、他の債権者より優先して支払いを受けることができる権利です。
民法以外の各法で先取特権の定めがあります。
例えば、マンションの管理費について、マンション法・区分所有法は、管理費滞納者の専有部分(区分所有権)と専有部分に設置されている家財道具などの動産に対する先取特権を認めています(同法7条)。
詳しくは、コラム「管理費滞納者へのマンション法・区分所有法上の権利・手続き」を参照下さい。
【関連用語】
担保物権
動産売買先取特権
【参考条文】
○民法305条
先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
○民法311条
次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の動産について先取特権を有する。
五 動産の売買
○民法321条
動産の売買の先取特権は、動産の代価及びその利息に関し、その動産について存在する。
○建物の区分所有等に関する法律7条1項
区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。