債権回収のよくあるご質問

強制執行にはどのような種類がありますか?

強制執行には、金銭の支払いを目的とする金銭執行と、土地の明け渡しなど金銭以外の債権の実現を目的とするものがあります。
金銭執行の主なものは、債務者の有する債権や動産、不動産に対する強制執行があります。

1.強制執行の種類(金銭執行)

強制執行(金銭執行)は、債務者がお金を払わないような場合に、債務者の財産をお金に換えて債権を回収する手続きです。

(1)担保権がない場合

債権者に抵当権などの担保権がない場合、訴訟等により債務名義を取得し、それに基づいて強制執行を行います。主に使用されるのは次の3種類です。対象となる財産によって手続が分かれています。

①債権執行

債権執行とは、債務者が有する債権を差し押さえ、換価する手続きです。債務者が有する債権のうち、代表的なものは、勤務先に対する給与債権、取引先に対する売掛債権、銀行に対する預貯金債権等です。

債権は、動産や不動産執行と異なり、第三債務者から金銭を取り立てできるため、換価の手続きが不要であるというメリットがあります。

なお、銀行に対する預貯金債権を差押えた場合、裁判所からの差押命令が銀行に届いた日の残高のみ差し押さえることができます。これに対し、勤務先に対する給与債権を差し押さえた場合、一度の差押命令でその後の給与も差し押さえることができます。

②動産執行

動産執行とは、債務者の有する現金や宝石などの財産を差し押え、換価する手続きです。

しかし、債務者の生活を保護する必要もあることから、生活に必要な家具や家電、生業に必要な道具、標準的な世帯の2か月分の生活費相当で政令で定める現金(66万円)等は、差し押さえ禁止財産とされているため、差し押さえることができません(民事執行法131条)。

なお、債務者が法人の場合は、現金は差し押さえ禁止財産とはされていないため、レジに入っているお金に対して動産執行を行い、全額回収することも可能です。

差し押さえ禁止財産について詳しくは、「差し押さえできない財産とは?差押禁止財産」をご参照ください。

動産執行は、差し押さえ禁止財産などの理由により、債権回収方法として直接的な効果は高いとは言えません。

しかし、裁判所の執行官が自宅や店舗等に立ち入って行う手続きのため、一定のインパクトがあり、以後の債務者の支払いに対する心理的効果が見込める場合もあります。

③不動産執行

不動産執行には、債務者の有する土地や建物を差し押さえ、競売し、その売却代金から債権を回収する手続き(強制競売)と、債務者の不動産を売却せず、その収益によって債権を回収する手続き(強制管理)があります。このうち、主に使用されるのは強制競売です。

不動産は一般的に高額であることが多いため、強制競売にはまとまったお金が回収できるというメリットがある一方、申し立てにまとまった額の予納金(名古屋地方裁判所では原則70万円~)が必要というデメリットがあります。なお、後述の抵当権等の担保権が設定されている場合、抵当権が優先します。

(2)担保権がある場合

債権者は、抵当権等の担保権を有している場合、債務名義なしに強制執行を申し立てることができます。

例えば、銀行が住宅ローン債権を担保するため抵当権を有している場合、住宅ローンの支払いが遅滞すると、銀行は裁判をせずに住宅を競売にかけることができます。

2.強制執行の種類(非金銭執行)

強制執行には、金銭債権の回収を目的とするもの以外にも、不動産の明け渡しや有価証券等の引き渡しを目的とするものもあります。

参考条文

民事執行法

(差押禁止動産)

第百三十一条 次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。

一 債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具

二 債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料

三 標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭

四 主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物

五 主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物

六 技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)

七 実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの

八 仏像、位牌はいその他礼拝又は祭祀しに直接供するため欠くことができない物

九 債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類

十 債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物

十一 債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具

十二 発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの

十三 債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物

十四 建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品

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