借用書がなくても、貸金の回収は可能です。
弁護士から内容証明等で請求することによって貸金を回収できる場合があります。また、裁判においては、相手が貸付の事実を争わなければ、借用書がなくても請求が認められます。貸付の事実が争われた場合であっても、振込履歴等で貸付の事実を証明することも可能です。
1.借用書とは
借用書(借用証)は、お金の貸し借りを行った際に、借りた日付や金額、返済の約束などを明らかにするために作る文書です。「金銭消費貸借契約書」などというタイトルで同様の書面を作成することもあります。
2.借用書がある場合
借用書がある場合、典型的には次のような場面で意味を持ちます。
相手が約束通りに支払わないので、相手の財産を差し押さえて取り立てようと思ったとします。しかし、公正証書を作成していなければ、差押えのためにはまず裁判所に訴えて判決を得る必要があります。訴訟を提起しても、相手は「そんなお金を借りた覚えはない」と主張する可能性があります。この場合、訴えた側はお金を貸した事実を証拠により証明しなければなりません。この証拠として借用書を提出します。
借用書の記載内容にもよりますが、通常、借用書の真正(本当に本人が書いたのか)に争いがなければ、お金を貸した事実が認定されます。そして、相手から有効な反論(借りたお金を返済した等)がなされなければ、相手に対してお金の支払いを命じる内容の勝訴判決を獲得できます。この判決を使って、差押えもできるようになります。
3.借用書がない場合はどうするか
上の例で借用書がない場合、別の手段でお金を貸した事実を立証する必要があります。ある事実を証明するためにどのような証拠を提出するか(証拠方法)は原則として自由です。つまり、お金を貸した事実を証明するために必ず借用書がなければならないわけではありません。
なお、お金を貸したという事実は、厳密にいうと、①お金を渡したという事実と②返還の約束、の2つに分けられますので、これら①②の事実をいずれも立証する必要があります。
お金を貸した事実について、借用書以外に証拠になりうるものとしては、以下のようなものがあります。
①お金を貸したという事実を裏付ける証拠
- お金を渡した際の領収証
- お金を振り込んだ際の振込明細書、通帳の振込履歴
- お金を受け取ったことを認める内容のLINE・メール、通話の録音など
- お金を貸すために自分の口座から出金した記録のある預貯金通帳
※ただし、出金記録だけでは出金したお金の使途までは分からないため、お金を貸したという事実の裏付けとしては弱くなります。
②返還の約束を裏付ける証拠
- 相手から返済の猶予を求めてきたLINE・メール、通話の録音など
- 返済金を振り込みで受け取ったことがある場合、入金の記録のある預貯金通帳
- 返済金を現金で受け取って領収証を渡した場合、その控え
借用書がなく、事実関係に争いがある場合には、これらを組み合わせて証明することを考える必要があります。